プロジェクトK〜未来への総力戦〜
大学院に進学することを考え始めたのは大学3年の秋あたり、皆が就職活動の準備にさしかかる頃だったかと思います。もともと国際法を学びたかったから法学部へ入学したのですが、段々と自分の学びたい方面は国際政治であることに気付き、政治学系の大学院へ進学しようと思いました。
私のいた東洋大学法学部は、国際化だの多様化だのを謳っている割には政治学や国際関係に関する講義が少なく、従ってほとんど初学者といってよい地点から受験勉強を始めました。英語についても(これも今もですが)苦手意識が大きく、正直言ってゼロからのスタートという感じは否めません。
はじめは大学院進学を志す友人とともに、語学を中心とした勉強を始めたのですが、なかなかはかどらず、また大学院へ進学した先輩から「他大学の院へ行くなら予備校へ行ったほうがいいよ」といわれていたので、早稲田セミナーなど、他の予備校の説明会とも比較し、大学院入試受験生のホームページで評価の高かった河合塾ライセンススクールに4年の春から通うことにしました。
・今後受験される方へ
大学院入試では語学力が大変重視されます。私は、先述したように英語が苦手なので苦労しました。だから英語の勉強方法については参考にならないので書きません。ここでは専門科目についての学習方法について触れたいと思います。
専門科目(政治学)
河合塾では澤里先生の国際関係・政治学を受講していたのですが、初学者にとってはこの講義を受講しているだけでは当然不充分です。政治学の概説書を読み、項目ごとにノートにまとめる作業を繰り返しました。これはすべての項目をまとめていくわけではなく、自分の専攻したい分野だけでいいと思います。普通は国際政治専攻の学生に「護憲三派内閣について書け」というような論述はでませんから。
専門科目で問題になるのは、知識よりも論述の仕方だと思います。こればかりは本を読んだり、講義を受けたりするだけでは身につきません。私は司法試験受験予備校の教えに従って、模範解答を書き写し、余白に論理の展開を書き込むという方法を採りました。
演習ノートを題も書き写す頃には、自分で論理構成が出来る様になるものです。また、国際関係・政治学の直前講習では問題演習があり、自分で書いた答案を澤里先生に見て頂けるので、休まず、予習をして望めば、かなりの実力アップを図ることが可能です。政治学についての基礎知識は十分だと考えている人は、直前講習だけでも受けてみるとよいのではないかと思います。
研究計画書
これに悩む方が多いようです。私も研究テーマは前から決めていたのですが、具体的な研究方法がわからず、自分の大学の先生にアドバイスしてもらってやっと決めることが出来ました。河合塾では研究計画書指導が2回受けられるので、一度目に自分の研究したいテーマについてのアドバイスを貰って書き直した後、もう一度先生に見ていただけるのが大きな利点だと思います。
私の場合は、一度目で「内容的には問題はない」と言われ、二度目に細かい表現までチェックして頂いたことで安心感をもって研究計画書を提出することが出来ました。ただ、面接での質問は研究計画書に基づいて行なわれるため、質問されやすそうな点についても伺うべきだった、と面接試験後、後悔しました。
ここで一点だけ皆さんにアドバイスするとすれば、たとえ研究計画書の提出が求められなくても、研究計画書を作成していたほうがよい、ということです。上智や早稲田の法学研究科など一部の大学院では、研究計画書の提出はありません。よってこれらの大学院を第一志望で受ける受験生の中には、研究計画書を書かない人もいます。
実際、私の友人で早稲田の法研に受かった人は、2次試験での指導教官との面接でも研究計画については何も聞かれなかったと言っています。無論これらの大学院が第一志望で、そのまま合格できれば問題ありません。しかしながら人間必ずしもたった一回しかない本番の試験で実力が発揮できるわけではありません。
それらの大学院に落ちた場合に研究計画書も書いていないようでは、他校に出願することさえも非常に困難になってしまいます。実際、早稲田の法研を第一志望にしていた別の友人は、武運拙く不合格になった後、他大学への出願ができず、結局大学院進学を諦めました。河合塾の場合、研究計画書指導はコースに含まれているし、合格後のことを見据えても無駄にはならないと思います。ぜひ受けて、そして研究計画書を作成してください。
・本試験実況中継
筆記試験については河合塾で過去問を見ていただいた方がよく理解していただけると思うし、記憶も曖昧なので、ここでは多くを述べません。ただ法政では、大きな論述問題として「政治学とは何か」という設問があり、非常に難儀したことを覚えています。結局、政治学の大まかな分野について書いて誤魔化しました。よくあれで通ったものだと自分でも思いました。
面接試験
上智大学の場合
研究コースでは研究計画書の提出がないため、専門科目の授業(つまり指導希望教官)と語学を出題されたお二人の先生方が試験の内容に関連した事柄と専門の知識について質問していくという流れでした。ただ、私は語学の出来が芳しくなかったため、英語についてのお叱りを受けたので、他の方は違ったかもしれません。
専門の知識についての質問は、一般的に知っていて当然と思われることや受験者の関心領域に沿ったことが聞かれるようなので、答えられないのはまずいですが、かなり面食らってしまい、しどろもどろできちんと答えられませんでした。今後受験する方は気をつけてください。ちなみに面接官は人ほど一列に並んで受験者と正対する位置にいらっしゃいましたが、質問をされたのはその3人の先生だけで、あとは司会役の先生が最初と最後だけ指示を与える形でした。
法政大学の場合
上智と同じように面接官は名前後なのですが、面接会場が明らかに狭く、面接官全員が机につくのがやっと、という感じで会場に入った時から違和感は拭えません。司会役らしいもっとも受験者に近いところに座っている方に「じゃ、自己紹介と何で法政の大学院なのかという点、後どんな研究をしたいかと将来はどうするつもりなのかについて、7分で言ってください」といきなり言われ、正直いってパニック状態でした。
7分は長いです、あの時、特に自分では全部述べたつもりになって「以上です」と言った後に「ん?まだ3分しかたってないよ、もう少しあるでしょう」と続行の指示が出された時は泣きそうになりました。
ただ、今にしてみれば、7分という時間指定があったのは、その間に受験者の提出書類に目を通す為じゃないのかと思えます。事実、自己紹介が終わったあとは研究計画書の内容について質問されました。最初は指導希望教官だけが質問するのかと思っていたのですが、指導希望教官よりもほかの先生方の質問が厳しく、研究の範囲をもっと限定しないと2年間では無理ではないかと、というようなご指導も頂きました。
他にも、研究テーマと被る問題について報道したNHKのドキュメンタリーを見たか、この本は読んだかなど、質問されました。「知りませんでした」「すいませんわかりません」を連発してしまいました。最後のほうで、面接中なのに研究テーマに沿った文献を紹介して頂いたりと非常に学生の指導に熱心な先生が多いのだなという印象を受けました。
また、私は、修士課程終了後は就職したいと考えていたのでその旨述べると、では今年は就職活動をしたのですか?と質問されました。これは両方の大学で聞かれました。自分はしていなかったので、そう答えたのですが、法政の先生の口ぶりからすると、就職活動に失敗したから大学院に行こうという人を選別するための質問のようでした。
・河合塾ライセンススクールで学習してよかった点
講義について
総合英語、法学系英語、国際関係・政治学を受講していました。総合英語は、単語がわからない場合の訳し方など、実戦で役に立つことこの上ない講義です。この講義を受けていただけで随分違うと実感できました。ただ、藤巻先生御自身もおっしゃられているように、文法についての理解が低い受講生は、英文法を同時に受講すべきだと思います。私自身、文法知識の欠落を上智の面接で指摘され、試験後の現在、秋期講座で英文法を受講しています。
法学系英語は、英文読解のトレーニングという面以外に、法学、政治学の知識を英文を通して学ぶ、という面があると思います。実際、そういう専門知識がないと専門科目に関連した英文を訳さなければいけない院試には対応できないとおもいます。逆に言えば、専門知識があれば、多少英語力が低くても何の話かぐらいはわかることもあるわけです。法政の英語は私にとってそうでした。無論これはまぐれ当たりみたいなものですから、英語力と専門知識は双方共に必須であり、このふたつをすり合わせるという点でこの講義は重要だったと思います。
国際関係・政治学では、市販の概説書では対応できない、新しい問題群などについての解説が充実しており、独学では難しい部分をカヴァーできたのは、この講義のおかげだと思います。他にも先述した、研究計画書指導の折に志望校の相談にも乗っていただいたことなど、澤里先生には随分助けていただきました。このように、河合塾ライセンススクールの講師の方は、(他の講義を受けた受講生の意見から考えても)総じて熱心に指導してくださる方が多いことが大きな魅力だと思いました。
ビデオ補講について
河合塾ライセンススクールでは、ビデオ補講が無料で受けられることも大きな魅力です。他の予備校では500円前後の料金を取られるのが一般的なので、ありがたいです。私は、講義をライブで受けられないことが多かったので、よく活用しました。また、授業の復習用として見ることも可能なので、今後受けられる方は、有効活用すべきだと思います。
ただ、時期によっては、公務員試験などの受講者数が多い講座の受講生が多数ビデオを予約するため、余裕を持って予約した方がよいでしょう。
過去問について
過去問を解くことは、試験対策の第一歩です。しかしながら、大学受験と違い、大学院入試では、過去問の提供がさほど熱心にはされておりません。慶應のように、学外生にはより高い値段で過去問を売るような学校も存在します。あるいは上智のように、過去問はインターネット配信で無料だが、1年分しかない学校もあります。そんな時、頼るべきものは、河合塾での過去問公開しかありません。
大学にもよりますが、ほとんどの大学について5年前後のストックがあるというのは、他の予備校に比べても多い方のようです。また、過去問閲覧は貸し出し式なので、慶應の図書館で過去問を買うように1枚につき100円(学外生は多分これぐらいだったと思う)を出さなくとも、円でコピーが可能です。学内生と学外生が受験で異なる条件に立たされるのは、主に情報面だと思います。
特に過去問についてはこの傾向が顕著で、例え過去問が公開されている学校でも、学内生は閲覧できる問題よりも古い年度の問題を先輩などから入手することが多いようです。このような差を、河合塾などを利用してなんとか縮めてください。試験が出来ていれば、学外、学内の差別はない、と公言する先生が多く、また、それは私の合格にも見られるようにある程度の事実でもあるので、何とか対策をとり、希望の先生につけるよう、がんばってください。
最後に
大学院の合格はゴールではなく、通過点である、ということがよく言われています。まさしくその通りですが、逆に合格しなければ、自分のやりたい研究を、自分の付きたい教官のもとで行なうことすら出来ないわけです。これは東大の教授に言われたことですが、「大学院でこの研究をしないのなら、自分には生きている価値がない」と思い、なんとか希望の大学院に入ってください。正直言って、大学院の入試は孤独な戦いです。
周囲のほとんどは就職が決まり、自分だけが苦労しているような気分になることもあります。私は、この時期を自分の好きな映画を見ることで乗り切りました。皆さんもそれぞれの方法で、大学院へ行こう!と思った時のあのモチベーションを忘れないで、そして維持してください。入試直前から本番へかけての精神的にギリギリの状態で、最終的に試験を乗り切るために必要とされることは、必ず勝つ、いや勝たねばならない、という意気込みです。
これがなければ、試験でわからない問題が出た時でもなんとか書いてみるとか、面接で知識は足りないかもしれないが意欲的なところをみせる、などということはできません。戦術的なことを述べれば、大学院はまともに勉強していて、複数校受験すれば必ず合格します。
ただし、この当たり前のようなことを当たり前のように実施するのは、並み大抵のことではありません。先述したように、大学院入試は情報の限られた、孤独な戦いだからです。その荒れ狂う嵐の中で、呆然と立ち尽くすあなたを、たった1インチの光へと導くために、全力でバックアップしてくれる、それが河合塾ライセンススクールです。
KALSを上手に利用し、モチベーションを維持できれば、入試という真実の瞬間に遅れをとるようなことはありえません。ここまで読んでくれたあなたに、大学院受験とその後の研究生活が幸せな思い出だけを残さんことを祈り、ペンをおきます。
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