キャリアの棚卸し
私は大学院進学を受験一年前に決め、半年間勉強しました。進学の理由は、今後の自分の人生を真剣に考えた結果、これまでのビジネス人生の棚卸をし、さらにキャリアアップができる最後のチャンスだと思ったことです。この強く確かな意志が、合格へと導いたものと確信しています。ただ漠然と、「勉強したい」、「キャリアアップしたい」、だけでは他の受験生と差がつきません。特に人気校ほどその傾向は強いようです。今回、私の知人が何人か同じKBSを受験しましたが、合格した人と、そうでなかった人との結果の差には、それなりの要因があると感じました。以下、その点も含めて詳しくお話したいと思います。
KBS対策
まず志望理由書についてですが、KBSでは合否に大きく影響します。この志望理由書の出来がいいほど、面接で苦労することはなく、そうでないほど面接で突っ込まれ、上手くいかないようです。志望理由書の出来具合いは、冒頭で述べたように、志望理由の強さ、必然性そして一貫性にあると思います。また、この志望理由書でいかに効果的に自分の意思を伝え、アピールできるかは論理思考力にあり、これは小論文の論述力に比例します。したがって、私は受験勉強においては小論文に最大の注力をしました。
論述力は一朝一夕で上達するものではないというひともいますが、大学院進学を志望するくらい志のある人であれば確実に上達します。そのためには良書を読み、自分で文章を数多く書くことだと思います。私が確実にやった勉強は、経営学と論述に関する良書を読み、新聞の社説と良書から選んだ文の要約を試験直前まで毎日欠かさず書き続けたことくらいです。書名は「創造的論文の書き方」、「知的武装講座」伊丹敬之他。「論理トレーニング」野矢茂樹、「演習 経営学」亀川雅人等。KALS経営学の先生からは常に高得点を頂くことができ、大いに自信がつき、実際の試験会場では全く緊張せずに、論文を書くのが楽しいと思えるほどでした。しっかりと準備していない人は、試験で必要字数を満たすことすらできず、かつ伝達効率の低い文章となってしまい、合格できていないようです。小論文のポイントは、課題文から論旨を素早く読み取ること、そして確かな視点を示しながら、一貫性のある、わかりやすい文章を心がけることです。
英語は10数年遠ざかっており、最初は思い出すのに苦労しました。とにかく基本から徹底しようと思い、文法問題集と長文読解問題集はしっかりやりました。そしてKALS授業での和訳と、過去問を何問か解き、設問形式に慣れておきました。KBSの場合、単に英語力が問われているだけでなく、論理思考力、状況判断力、計算力(?)など、いわゆる‘地頭’の良否を試していると思える様な問題で、そういう意味では、長文の大意をしっかり掴むことと、和訳では意味の通る日本語を心がけました。
本試験報告
小論文については、課題文に対する骨子250字以内。著者の主張に対する自分の意見1000字以内。配点は3:7。社会的責任(CSR)に関する問題。このテーマは既に志望理由書と重複していたので、KBSの受験生にとっては、さほど困難ではなかったはずです。ただし、だからこそ自分なりのオリジナリティをもって論理展開できるかが、合否の差となったのではないでしょうか。KBSの小論文では、ゼネラリスト養成を標榜しているため、どんな分野の課題文に対しても自分のスタンスをはっきりとさせ、その根拠を明確にして自論を展開していくことが求められています。そのためには、日頃から問題意識をもって社会を見るよう心がけることが大事です。新聞の社説や、余裕があれば「日本の論点」文芸春秋、「中央公論」など良質な文章に触れることによって視野を広め、視点を高めていくことをお勧めします。
私が受験した年の英語問題は、超長文かつ奇問でした。アメックスのカード戦略について。問題は計算問題、3つあるアメックスの戦略のうちひとつを選んで、自分の考えを述べる問題。ただし設問1は計算問題にいつの統計情報かが明記されてないため、誰も正解は答えられない。自分なりにロジックを設定して展開していく、という状況判断が問われてくる。設問2は、英語というより小論文の問題。生真面目に和訳をしてしまったら、出題意図からはずれ、点数は低くなると思った。半信半疑で課題文は無視し、ひたすら自分の見解を述べた。これが結果的に良かったのでは。ちなみに、その後の面接で教授から「今日の英語の試験はどう思った?ふざけるなと思った?」と聞かれた人、数人。おそらく、出題意図をどのように判断し解答したのか、その状況判断力を確かめたかったのであろう。
そして面接。3名の教授に受験生1人で20分。志望理由書の内容をもとに、志望動機の強さ・確かさ、論理思考力を確かめるようなアプローチ。KBSでは面接はとても重要視されていると感じた。かなり鋭い真意を試すような質問があった。合格した人とそうでない人とでは、突っ込まれた時の反応で明暗が分かれたようだ。何故?の繰り返しが続き、その質問に詰まりだすと苦しい展開となり、合格は遠くなる。確かな強い意志と、質問に対する誠意ある返答、そしてしっかりとした論理一貫性があればクリアできるはず。そのためには、志望理由書がしっかり書けていることと、小論文で鍛えられた論理思考力を発揮することで大丈夫。たとえ面接に不安を抱いてしまったとしても、自分に自信をもって臨みましょう。
忙しい社会人にとっては効率的
やはりKALSなどの専門機関を利用することが、忙しい社会人にとっては効率的な受験勉強法となる。私の場合、KALSでの学習で自分の実力が客観的にわかったことによって、追い込みの際の指針が明確になり、自信と余裕を持って試験に向かうことが出来たことが良かった。 以上、私の経験がこれから大学院進学やKBSを目指している方々に、少しでも参考になれば幸いです。
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