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初年度であった2004年度の法科大学院入学者選抜はどうだったのか、文部科学省の報道発表(表1参照)を中心に見てみましょう。
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● 倍 率 |
文部科学省発表の「平成16年度(2004年度)法科大学院入学者選抜実施状況の概要」によれば、延べ志願者数は72,800人。募集定員5,590人に対する志願倍率は13.0倍でした。ちなみに、最高倍率は、国立25.5倍(千葉大学)、公立20.0倍(東京都立大学)、私立30.6倍(成蹊大学)となっています。
各大学がホームページなどで公表している2004年度入学者選抜における志願状況や、当校編集の『法科大学院パーフェクトガイド【2005年度版】』(発行元:東洋経済新報社)作成の際に行った大学からのアンケート(2004年4〜6月実施)結果を見ると、総じて、既修者コースよりも未修者コースのほうが、募集定員に対して志願倍率が高くなっています。これは、合格率2〜3%の現行司法試験が壁となって法曹への途を諦めていた社会人や法学部以外の学生が、新たに誕生した法科大学院に多数出願したことを物語っています。
なお、国立1校、公立2校、私立11校の計14校は、合格者が他校に流れ定員を割り込んだようです。 |
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● 法学未修者・既修者の割合 |
入学者5,767人のうち、法学未修者として入学したのは3,417人、既修者は2,350人でした。法学未修者といっても、ゼロから法律を学ぶという人以外に、法学部を卒業して数年経った人など、何らかの形で法律学を勉強したことのある人がかなり含まれているようです。ただ、6割近くが未修者となった(未修者コースを選択した)ことは、法科大学院で基礎から法律を勉強しようという意欲の現れとも見ることができ、法学部や司法研修所での司法修習を含めた法曹養成全体のあり方にも一石を投じるものと思われます。 |
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● 社会人の割合 |
社会人の入学状況を見ると、法学未修者1,754人、既修者1,038人の合計2,792人、全入学者に占める割合は48.4%となっています。また、全入学者に占める社会人の割合が50%を超えた大学は34校にも上ります(『法科大学院パーフェクトガイド【2005年度版】』(前述)では、主要大学へのインタビュー記事を収録しています。その中でも掲載していますが、大宮法科大学院大学では入学者97人のうち83人が社会人であり、また明治大学でも入学者191人中127人を社会人が占めているとのことです)。
ただし、社会人の定義(大学を卒業して実務経験が3年以上など)が各大学により異なり、いわゆる司法試験浪人をどう扱うかなど、曖昧な部分もありますので注意が必要です。
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● 他学部出身者の割合 |
学部別の入学状況は、法学系学部の出身者が3,779人、法学以外の文系学部出身者が1,269人、理学・工学・農学などの理系学部出身者が486人、家政学部や教育学部などその他の学部出身者が233人となっています。全入学者に占める法学系学部以外の出身者の割合が50%を超えた大学も10校あります。ちなみに合格者ベースで見ると、立教大学、東海大学、東洋大学などが、法学部出身者に比べて法学部以外の文系学部+理系学部出身者が多いようです(『法科大学院パーフェクトガイド【2005年度版】』(前述)のアンケート結果より)。
前述の「社会人の定義」のように曖昧な部分はあるものの、社会人、法学部以外の出身者ともに、文部科学省が告示で求めた"定員の3割以上を入学させる"という目標はクリアしました。"多様な背景を持った法曹の養成"という法科大学院の理念は、ひとまず入口では実現されたと言えるでしょう。
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● 入学者の年齢・経歴 |
年齢構成については、合格者ベースで見ると、20〜30歳代で9割を超えています。しかし、40・50歳代以上の人も少なからずおり、入学者についても同様であると思われます(『法科大学院パーフェクトガイド【2005年度版】』(前述)のアンケート結果より)。したがって、年齢の点でも多様性は確保できたと言えるでしょう。同じく、男女比については、だいたい2:1〜3:1のところが多いと考えられます。
また、おもに社会人が所持する資格についてみると、司法書士や行政書士、公認会計士や税理士、弁理士といった比較的法曹に近い資格のみならず、医師や薬剤師、教員など幅広い資格取得者が法曹を目指しています。中には、アメリカの弁護士や会計士の資格を取得している人もいます。一方、職種で見ても、銀行・保険などの金融関係、マスコミ・広告、不動産・建設、情報通信など多岐にわたります。
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